豊前国の式内社と宇佐神宮行幸会八社を巡る2 ～惣社八幡神社、大富神社

　香春神社の鳥居前駐車場に戻ると雨がぱらついてきたが、雨は南西からやってくる、これから北東に向かうので大丈夫と意味のない悪あがきで合羽を着ずに次の予定地、みやこ町の惣社八幡神社に向かった。
　香春神社から国道201号線を東に進んだが、ほどなく雨が勢いを増してきたので、道の駅香春で合羽を着た。途中新仲哀トンネルを抜ける。仲哀峠(七曲峠)をパスするトンネルで、仲哀天皇が熊襲征伐の際、この峠を通ったことに由来するという。
　トンネルを過ぎてしばらく進み県道58号線に進路を取り、国道496号線を越えたら、豊前国府跡への案内板が出ている。付近には国府跡の他、国分寺跡などもある。

　案内板に従うと豊前国府跡の公園の一角に鎮座する惣社八幡神社にたどり着く。この看板の前に駐車スペースがあり、そこから向かうと境内の脇から入ることになる。ここに辿り着く前に雨はあがっている。

　惣社八幡神社の境内入口の鳥居。

　境内入口の鳥居から石畳の参道、先に二の鳥居。

　惣社八幡神社の拝殿。

　拝殿内の扁額。

　惣社八幡神社の本殿は流造り。豊前国総社として崇敬された社。全体の雰囲気は惣社という先入観からか、おおよそ事務的なあっさりとした境内の印象。宇佐神宮放生会の銅鏡奉上においては、いくつかの八幡宮を経由するが、当社もその内の一社である。

　県道58号線に戻って、道なりに南東に進むと国道10号線に行き当たる。それを更に南東に進むと、椎田道路から伸びてきた国道10号線と合流する地点付近に大富神社の立看板が出ていて、神社へ導いてくれる。
　大富神社は式社ではないが、三代実録記載の社である。宇佐神宮とも少なからず関わりがあり、また通り道でもあるので立ち寄ってみることにした。

　県道230号線を通ってくると、境内西側の駐車場にたどり着く。そこから一番近い境内入口の鳥居。拝殿が見通せる。

　境内西側の入口の鳥居。参道の作りからこちらが表参道のようであるが。。

　西側入口の鳥居をくぐると、参道はすぐに左折する。玉石が敷き詰められた、いい雰囲気の参道。

　西参道の二の鳥居の先、右側に勅使井の扁額が掲げられた鳥居と井戸がある。宇佐神宮の勅使が当地に宿泊した際、水を汲んで炊事に使ったことからこの名がついた井戸である。宇佐神宮勅祭の時には現在もここの水を祭礼用の御神水として献上しているという。

　大富神社の拝殿。妻入りの入母屋造り。

　大富神社の拝殿と本殿。拝殿は桁行の幅があり、本殿は檜皮葺の屋根で背高である。とても重厚感のある組み合わせで素晴らしい。

　大富神社の本殿。住吉大神・宗像大神・八幡大神を祀る。

　本殿の扁額。中央の本殿には応神天皇・仲哀天皇・神功皇后の八幡神、東殿には田心姫命・湍津姫命・市杵島姫命の宗像三女神、西殿には表筒男命・中筒男命・底筒男命の住吉三神。
　創建年代は不詳であるが、先述の通り、三代実録記載の古社でいわゆる式外社である。元々の祭神は宗像三女神であったという。その後白鳳元年(672)、当地の治政者に住吉大神・八幡大神の託宣が下され、祀られるようになったという。

以下、神社辞典(東京堂書店)より大富神社の項。
　福岡県豊前市山田町四郎丸甫起山。旧県社(現、別表神社)。
　祭神は住吉大神・宗像大神・山田八幡宮・大富神・斎主神。例祭4月3日。古社であることに『三代実録』貞観2年(862)10月の条に「授豊前国正六位上大富神従五位下」とある。また、社記には崇神天皇5年この地に天疫が流行したので国主が神官を当宮に祈祷させ疫病が止んだ事、祭神の由来を往古、宗像三女神が真早という者に、白鳳元年、横武行次という者に八幡神・住吉三神が、それぞれ神託を下されたことによるという、勅願祈祷等の信仰伝承は枚挙に遑ない。
　国無形文化財としての「豊前感応楽」(天地感応楽・国楽)は天平13年(741)に始まり天正15年(1587)まで執行、その後延宝4年(1676)まで中絶、同5年巳6月より今日に至る。もとは夏越大祓の神事であったが明治10年(1877)頃より4月30日、5月1日の御田植祭と結びついている。修復時の古棟札等、多くの文化財が保存されている。